夜雲
何時もはゆったりと空をたゆたう雲も、時折速く流れるときがある。
今日は、やたら風が強かった。
昼間は白く綺麗な雲も、宵に溶けるにつれ姿を変える。
宵の雲は仄赤く染まり、まるで醜悪な生き物のような形相を呈す。
更に上空の風が強いならば、化け物は僅かに千切れ、波打ちながらゆらりと飛来し、私の上空に襲いかかるのだ。
ぽっかりと口を開けた雲の塊が私を飲み込みにかかる。
そこを見計らい携帯を反転し、カメラを瞬時に起動。
恐ろしい雲の覆い被さる様を、私はシャッターを切って捉えたはずだった。
然し、
雲は全く映らず、私には見えない星だけが携帯の画面に光った。
正に、雲集団は幻想の生き物による百鬼夜行のように宵の空をのたうっている。